全然、大丈夫!
野口先生の『「超」文章法』を読んだだろうか?
野口悠紀雄先生の「さらなる」という言葉への
嫌悪感はすさまじく、
右のリストにある言葉で私がとくに目の敵にしているの
は、「さらなる」だ。「一層の」という意味で使われてい
るのだが、これは誤用である。
(中略)
文章中にこの表現がでてくると、私はその文章の内容全
体を信用しない。言葉に対して敏感でない人が書いている
証拠だからである。
いまや政府の白書はこの言葉のオンパレードだが、二〇
年前の白書を見ていただきたい。こんな妙な言葉は、使わ
れていない。これが猛威をふるいだしたのは、せいぜいこ
こ一〇年くらいのことだ。大新聞の見出しにも、数年前か
らのさばり始めた。
(中略)
辞書も汚染されてきた。最初はハンディな小型辞書だけ
だったが、次第に大型辞書も汚染されるようになった。
『広辞苑』はごく最近までこの表現を認めておらず、「さ
すが広辞苑」と評価していたのだが、最新版はついに認め
てしまった。『岩波国語辞典』は「第二次大戦後の用法で
ある」という注で罪悪感を表明しているが、『広辞苑』に
は何の注記もない。私は、絶望的な気持ちである。こうし
た問題に心を悩ませるのは精神衛生上よくないと、最近で
は思い始めるようになった。(1)
とある。
私も嫌いだ。
もっと嫌いなものがある。
<全然+(肯定)>が、全然、ダメだ。
「全然、大丈夫!」
という使い方や、
「全然、格好いい!」
などだ。
黒板に爪で、キーッと音をたてられた気持ちになる。
(たとえが悪くてごめんなさい)
友人に「全然、格好いいじゃん!!」などと言われると、
褒められているのか、けなされているのか、わからなくなる。
実は、『広辞苑』で、<全然+(肯定)>の用法が正しいのかどうか、
調べてはいない。
『広辞苑』・最新版で認められていたら怖いので、
調べる気になれなかったのだ。
生理的に嫌としか言えないだろう。
「全然、大丈夫!」なんて、全然、大丈夫でない!!
(城田 博樹)