探すなよ!
学生のとき、市内のケーブルテレビ局で、
アルバイトをしていた。
短期のバイトだった。
大規模な落雷があった。
各家庭をまわり、ケーブルの修復作業の補助をした。
メチャクチャ大変だった。
落雷騒動が収まった頃、
上司が「外まわりで大変だったろうから」と、
内勤の仕事を与えてくれた。
「サタデー・サテライト」という、
ケーブルテレビ局独自の番組のプロデューサーが、
内勤にしてくれたのだった。
加入者の住所を、コンピュータに入力していく、
というものだった。
私の苦手な「ひらがな入力」で。
私は、聞いた。
「『ら』は、どこにあるのですか?」
「ここだ!」上司は、すぐに、答えてくれた。
外まわり担当の人は、言った。
「そんなの教えたら、勉強にならないじゃないですか!」
上司は答えた。
「『探す』なんてことに、時間をかけちゃいけないんだ!」
私の人生は、一変した。
「探さなく」なったのだ。
書店で、本が見つからなければ、すぐ、店員に聞く。
家が、どこにあるか分からなければ、すぐ、人に聞く。
以後、サークルの後輩たちにも、
「1分、探して分からなければ、聞け!」
と指示するようになった。
後輩たちに用事を頼んで、送り出すときの私の言葉は、
「探すなよ!」になった。
否定文で指示するのは、良くないなと思い始めて、
「すぐ聞けよ!」
に、後に、変えた。
口を酸っぱくして言っているのにもかかわらず、
自分が、1分以上、探してしまうことがある。
「探す」習性は、なかなか直らないものだ。
「いけない、いけない」
自分に言いきかす。
投稿者 : 城田 博樹 | 投稿日時 : 2009.03.12 21:12