素直な気持ちになること
それは、私が自動車教習所に通っていたころだ。
21歳のときである。
その日の教習項目は「クランクとS字カーブ」。
1番の番号を付けた車があたった。
たぶん、その教習所で最もベテランの教官だったろう。
クランクの右折、左折を詳しく解説してくれた。
S字カーブも、具体的に、長々と、手取り足取り教えてくれた。
道路の縁が、ミラーのどの位置に来たときに、
ハンドルを切るのかも教示してくれた。
クランクとS字カーブは、運転で、1番ハンドル操作が難しいところかもしれない。
その教習が、終りに差し掛かったころ、
そのベテラン教官は、こう言った。
「色々教えたが、要は『素直な気持ちになればいい』ということだ」
「素直な気持ちで、『危ない』と思ったら、それは危ないし、
素直な気持ちで、『大丈夫』と思ったら、それは大丈夫だということだ」
と彼は言った。
「自分の感覚を信じればいい」ということである。
これに、私は、驚嘆してしまった。
20年たっても、心に残っている。
私は今でも、「素直な気持ち、素直な気持ち」と言いながら、毎日を生きている。