シナリオ・ライフハック Vol.2

~あなたの人間力を高めるブログです

だからその絵は鹿児島にある


私が関東の大学に通っていた2年のとき、

妹が大阪から、私のアパートに遊びに来た。


部屋に飾ってあった絵――1年生の合同展覧会に

出品したときの作品だ――を観て、妹は言った。


「この絵、格好いいやん! これ、ちょうだいよ!」


「うん、いーよ! ここに置いといたら、保存状態、悪いだろうし」


建築デザイン専攻の友人が建物のスケッチに色を付けていた方法を、

教えてもらって描いたものだった。


「パステルを削って画面に落とし、広げるんだよ!」


大阪の実家が、私の大学2年の終わりに改築を行ない、

鹿児島から見物を兼ねて、母の伯父さんが遊びに来た。


私の母方の伯父さんではない。

私の母の伯父さんである。


伯父さんは、全ての部屋を観た後、

最後に妹の部屋に飾ってあった私の絵を観て、


「これ、もらえないか?」

と言ったそうだ。


「いいですよ。兄、こういう勉強してるんですよ」

と妹は快諾した。


十年以上経って、伯父さんが亡くなった知らせが母に入った。

「伯父ちゃんが、亡くなったの」


鹿児島の伯父さんの家に駆けつけた母が観たのは、

居間の一番目立つ場所に掛けてあった私の絵だった。


だからその絵は鹿児島にある。


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